「大阪維新の会」が2011年9月に発表した「大阪府教育基本条例 (案)」に対して全面批判の意見書を作成しましたが、特に現行法規と矛盾・抵触する点について、下記のとおりまとめました。

多くの点で法的整合性に欠けた条例案であり、現実に執行することは困難です。そのため、この原案通りには成立しませんでした。 ⇒実際に成立した条例


大阪府教育基本条例(案)の法的問題点

――― 現行法との矛盾・抵触により、このままの形での施行・執行は不可能 ―――


★ 条例によって知事の権限を自由に定めてよいと述べている点  
⇒地方教育行政法25条の解釈の誤り      
地方教育行政法25条は、知事が条例に基づいて教育に関する事務を執行できると定めていますが、知事の権限を自由に拡大できる訳ではありません。 条例で定めることのできる範囲は、同法24条・24条の2の範囲内だけです。

★ 知事の権限を法律の範囲を超えて拡大している点
⇒地方教育行政法24条、24条の2に違反    
教育に関する知事の職務権限は、地方教育行政法24条、24条の2が定める7項目に限定されています。
政治家が教育に介入すること(教育の政治利用)を避けるためです。

★ 教育委員会の権限を実質的に縮小している点
⇒地方教育行政法23条に違反          
地方教育行政法は、教育委員会の権限として19項目を定めています。
これを教育委員会から知事へ移管することはできません。

★ 知事が教育委員を罷免できると定める点(罷免理由を法律より拡大している点) 
⇒地方教育行政法7条1項に抵触       
知事が教育委員を罷免できるのは、@心身の故障、A委員に適しないほどの非行、の場合に限られています。
これに相当しない理由で教育委員を罷免することはできません。

★ 学校協議会を、教育委員会ではなく校長が設置すると定める点
⇒地方教育行政法47条の5の趣旨に抵触  
現行法上、「学校運営協議会」は教育委員会が設置を決めるものであり、その運営に問題があるときは教育委員会が設置を取消します。 ところが条例案は、校長が「学校協議会」を設置すると定めており、適正な運営がなされる保障はありません。

★ 校長が教員の任用に関与する点 
⇒教育公務員特例法11条に違反       
現行法上、教員の任命は選考試験を行ったうえ教育委員会が任命すると定められています。 ところが条例案では、校長の意見が教員の任用において尊重されなければならないと定めています。各学校ごとの人気や情実に左右されるバラバラの就職活動が行われてしまう、公平な人材登用ができなくなります。

★ 教員の勤務評価を校長が行い、学校協議会も人事評価について協議する点
⇒地方教育行政法46条に抵触      
現行法上、教員の勤務評定は校長ではなく教育委員会が行うものと定められています。

★ 分限処分にあたっての適正手続違反 
⇒教育公務員特例法25条の2に違反    
現行法は、指導力不足教員に対する分限処分を「免職」に限定していません。また、分限処分にあたっては教育学等の専門家および保護者の意見を聞かなければならないと定めています。本条例案は、こうした現行法規に反しています。

★ 政治家である知事による「不当な支配」を可能にしている点、
★ 政治家である知事が「教育目標」を設定して、これを法的効力ある「規則」とする点
 
⇒教育基本法16条に違反         
現行の教育基本法が禁止しているのは、直接的な「政治教育」だけではありません。 幅広く、政治家や政党などによる教育への介入(=不当な支配)が禁止されています。
府知事が教育目標を定めるなどの条例案は、この現行法規に違反しています。



詳しくは、下記のページをご覧ください。

教育基本条例案への批判・反論   →教育基本条例・全条文   →実際に可決成立した条例





 

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