出演 / 杏 東出昌大 近藤正臣 高畑充希 キムラ緑子 ムロツヨシ 菅田将暉 ほか
■ 「空襲の火は消せない」と言うと逮捕された
―― その理由は 「防空法」
人気を博したNHKの朝ドラ「ごちそうさん」。 2014年2月第4週の放送で、主人公の夫・悠太郎さんが逮捕されました。空襲にそなえた防空訓練で、「空襲の火は消せない。消火せずに逃げろ! 自分の命を守れ!」と叫んだことが理由です。
悠太郎さんの発言は、今からすれば、市民の命を守るため当然の発言ですが、当時は許されませんでした。当時の法律「防空法」は、「都市からの退去を禁止する」「空襲のときは逃げずに消火をせよ」と定めていました。悠太郎さんの発言は、当時の政府方針に刃向かうものだったのです。
3月第1週の放送では、「地下鉄への避難が禁止されていた」という事実も描かれます。
(⇒ 関連ページ「地下鉄への避難禁止とは」)。
■ 空襲から逃げると処罰される。
「非国民」のレッテルも・・・
真珠湾攻撃による日米開戦の前日、1941年(昭和16年)12月7日には、防空法に基づいて「国民には避難をさせない」と内務大臣が通達を制定。違反して逃げると懲役刑に処されます。さらに政府は「避難した者は非国民だ。戻ってくる場所はない。」と宣伝し、「命を投げ出して御国を守れ、持ち場を守れ」と指示しました。
この方針は、東京や大阪が焼け野原になった昭和20年3月以降も変わりませんでした。学童疎開や建物疎開は実施されましたが、それ以外は地方への転居が禁止されたのです。(下の写真は、疎開の中止を指示する新聞記事)
■ 「空襲は怖くないですよ」
―― 空襲の情報統制と安全神話
逮捕される数日前、空襲の危険性を調べ上げた悠太郎に対して、家族は「まぁ空襲なんて、そんなに怖いものじゃないらしいですよ」と諭していました。
でも、その後に起きた実際の空襲は「猛烈な火の海」と「うずまく熱風」です。密集する木造住居はたちまち燃え尽くされ、あたり一面が「焼け野原」になりました。
なぜ、家族たちは「空襲は怖くない」と思っていたのでしょうか。その答えは、徹底した情報統制です。いわば「空襲への安全神話」が流布されていたのです。
たしかに、それまで一度も空襲を体験していない市民にとって、その恐怖は想像できなかったかもしれません。しかし、日本政府はすでに中国への空襲を繰り返していましたし、米軍機による大規模空襲を予測し、その威力も把握していました。
科学者も、空襲の危険性を指摘し、「焼夷弾を消すことは不可能」という論文を書いていました。 政府は、その事実を隠して、「空襲は怖くないから逃げるな、火を消せ」と国民に指示をしたのです。
政府刊行物には「焼夷弾は手でつかんで投げればよい」、「毒マスクは不要。長さ1メートルの“ハタキ”で火を消せる」など、およそ不可能で危険な対処法が書かれていました。
■ 空襲の被害者は、全国で50万人
―― 事実を掘り下げて光を当てる
政府による情報統制と安全神話。さらに町内会(隣組)の相互監視によって「逃げたいと思わない」、「逃げたくても逃げられない」という体制が作られていきます。
やがて戦争末期、全国に大量の爆弾と焼夷弾が落とされ、猛烈な「火の海」のなか、多くの市民が逃げ場所を失い犠牲となりました。死亡者は約50万人以上ともいわれます。
2度と繰り返したくない歴史ですね。 こうした事実は、書籍『逃げるな、火を消せ―― 戦時下 トンデモ 防空法』が、詳しく掘り起こしています。これまでに知られていなかった事実にも光を当てた書籍です。ぜひ、お読みください。
大前治著 / 合同出版 定価1,800円+税
書籍 『逃げるな、火を消せ――戦時下トンデモ 防空法』 には、戦時中のポスターや広告、新聞記事など200点以上の写真が掲載され、読みやすくて見どころが盛りだくさんです。主な見どころを紹介します。
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